D.I(ダイレクトボックス)は楽器のライン入力信号のインピーダンスを適正化してコンソールやミキサーに送るための機器です。スタジオやライブハウスで目にされたことがある方も多いかと思います。楽器の出力レベル(音量ではなくインピーダンス)を入力機器側の適正値に最適化しないことには、信号の解像度と感度が大きく異なってしまい正常な音像をトータルミックス上で配置できなくなるため、一般的には楽器のライン信号を直接出力しコンソールミキサーなどに立ち上げるときにはD.Iを経由します。

D.Iを介した楽器出力信号から得られる情報は非常に多く、電気パーツや内臓プリアンプ等のセッティングが音響的に適正に機能している状態かどうか、生音のキャラクターをどの程度まで出力に反映できているのかなどを高い解像度で把握することができます。このラインの音声信号こそがすべての始まりであり、その先のエフェクターやアンプへと出力されるオリジナルのソースなのにもかかわらず多くの方がこのライン音にあまり興味を持っていないのが現状です。ベースやエレアコに至ってはこの信号がそのまま加工、ミックスされることを考るとこの時点で良い音で無ければ、その後手を加えても十分な結果が得られないことが容易に予想できてしまいます。

そして大事なのは、D.Iに入力される音はどうあれば受ける側がそのまま良い音として処理しくれるか弾き手が能動的に提供するための絶好の判断材料ということです。業界標準として使われているD.Iは、世に星の数ほどあるオーバードライブペダルなどとは違いたかだか数種類のため、実は答え合わせが非常に簡単なデバイスなのです。

お預かりでの調整には、エレキギター、エレキベースは必ずD.Iを通したラインレベルの検証、検聴を行います。ネック反りや弦高、オクターブなどの一連の調整後に、D.Iを通してPUセッティング、距離感、マウント具合の検証し、音響的に適正位置への補正が必要な場合には修正いたします。その後、実際にアンプで音出しして音圧や演奏時の食いつき、バラツキやキャクターの最終調整となります。アンプでのチェックだけではどうしてもコンプレッション感とトーンがアンプ側の設定に依存する部分が大きくなるため、異なるアンプで演奏するとなると印象が全く変わって来ます。これではせっかく調整したものもあまり意味を為さなくなってしまいます。